今季 最後の?
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 
 



今年は大量発生した台風にすったもんださせられた日本の秋のだったが、
さすがに11月を前にして、ようやっと落ち着いてくれたようでもあって。
そうともなれば、

 「学園祭も間近ですわね。」
 「その前にはハロウィンもvv」

今年は絶妙な日取り、ハロウィンが週末に近いため。
お茶会なぞを予定しているお嬢様たちは、
そのまま学園祭ウィークへ突入となるのを
いっそ一緒くたに出来ないものかなんて、
珍しくも浮かれたことまで言い出す始末だが。

 「まあ、お気持ちは判りますよね。」

準備も含めて楽しいこと続きで、気もそぞろとなる中ですから、
お勉強だって身が入りにくいというもの。
展示に演奏や寸劇、夏休みに撮影したドラマの上映に、
ゲームコーナーや模擬店、迷路などなどと、
クラスの出し物やそれぞれに所属している部活の演目も盛りだくさんの、
そりゃあ盛大な催しの学園祭は。
OGやご近所のみならず、様々な方面へも有名なため、
どんなお客様がおいでかしらと、
そっちへもわくわくしておいでのお嬢様たちであり。

  それに今年は、

各々の部活への練習や準備にも顔を出すだけでなく、
実行委員会へも足を運ぶ毎日になっておいでの三華様がたなのは、
野外ステージでの例の出し物への打ち合わせというお仕事が増えたため。
特に小技がいるような演技は要らない台本を3つ、
執行部が用意したのそれぞれへ合わせ、
平八が“3Dプロジェクションマッピング”のプログラムを完成させ。
スクリーン代わりとなる舞台の壁や何やをやや修正し、
厳正なるくじ引きで選ばれたラッキーなお嬢様がたが、
空き時間に集まっては、立ち位置の打ち合わせを続けておいで。
実をいや、寸劇というよりも、
舞台に映し出される映像の妙こそが主役の代物なので、
場面場面ごとに、間違いのない位置に立っててくれさえすれば、
それは見事な映像の中、
ドラマチックな物語の登場人物として映える存在にしてくれるというから、
出演者への負担はむしろ極力少ない代物。

 「ヘイさんが一番ご苦労さんですよね。」
 「いやいや、そんな。もっと褒めてvv」
 「…………vvv///////」

おおう久蔵殿、そんなに首ばかりぐるぐると回さんで下されと、
頭を撫でてるつもりな紅ばら様へ、
もてあそばれちゃった電脳小町さんだったりもして。

 とはいえ、学園祭はあくまでも週末の催しで、
 学生の本文であるお勉強もおろそかにしてはなりません。

準備のためにと午前だけへ限って下さるご配慮もありがたく、
せめてその間くらいは集中しましょうねと、
英語か古文か、テキストを音読する声や、
体育館からかボールを床へと打つ音、
それは透明感のある斉唱の奏でがかすかに聞こえるほかは、
学園内もしんとした静寂に包まれて……いたのだが。

 「…え?」
 「だから、あれ…。」
 「いやですよ、そんな…」

何とはなく さわさわとしたざわめきがとある教室に広まってゆき、
それへ何だろかと遅ればせながら気がついたらしき ひなげしさんが、
視線を向けた…教室後方の、皆様のかばんや荷物を収める棚の上。
何か小さなものが素早く動いたのが見受けられ。

 「…っ。シチさん、今からは黒板以外を観ちゃあなりませんっ。」
 「え? 何のお話し……………っっ!!!」

十分と気を遣ったつもりだったが、
いかんせん、今の席順は平八が七郎次の斜め後ろだったので、
声をかけて来たひなげしさんの方を振り返った白百合様、
人は嫌いな物へは過敏となる法則も相俟って、
その、抜きん出た動態視力が
余計なものをきっちりと見てしまったようであり。

 「い…………いやっ。」

ひぃと息を引いてから、そん短いな悲鳴を上げたそのまま、
座った姿勢で固まってしまった白百合様が見た物は、

  もうお判りですねの、黒きG。(進撃の○○にあらず)

平八のくっきりとした声と、そこへ重なった七郎次の態度から、
他のお嬢様がたにも事情は伝わったようで、

 「きゃあっ!」
 「こっちへ来ますわっ、いやいやっ!」
 「み、皆様、お静かに。順番にお廊下へ出てください。」

丁度居合わせた教科担当の先生がまた、苦手としておいでだったようで、
か細いお声が裏返ってしまっておられたが、
それでも慌てる生徒らを、
何とか誘導しようと構えておいでなのはおさすがと言うものか。
そんな中、

 「久蔵殿、シチさんを…。」

選りにも選って、あれが一番苦手なお人だというに、
まだ静かだった内に、まともに全身を見てしまわれたものだから、
すっかりとカチンコチンに固まってしまっている白百合さんであり。
こんな場所へ置いてはおけぬと、
彼女を母のように慕う紅ばらさんへと声をかけた平八だったが、

 思えば、声をかけた時点で気がつくべきだった。

七郎次を退出させねばということを、
何よりも優先したいとするいつもの彼女であったなら。
平八が声をかけるまでもない、
その痩躯のどこにそんな力があるものかという膂力を発揮し、
白百合のお母様を
(こらこら)担ぎ上げてでも外へと連れ出しているはずで。
声をかけた平八へと背中を向けておいでの、セーラー服のお友達は、
だが、今や凛然と顔を上げて憎っくき敵との対決モードに入っておいで。

 「きゅ…。」

重ねて声をかけようとしたた平八へ、バッと勢い良く片方の腕を上げ、
開いた手を後ろへ扇ぐようにして、そのまま去れという意思表示をし、
もう片やの手へは、お馴染みの得物をすべり出させておいでと来たものだから。
此処まで戦闘意欲 剥き出し状態、
短距離走でいう“オン・ユア・マーク(位置について)”段階の彼女へは、
榊せんせえが出て来たって止められないこと重々承知。
しょうがないなぁと、七郎次の腕を取り、
そのまま“よっこらしょ”と器用に背中へ引っ張りあげつつ、

 「どうかご武運を。」

紅ばらさんへはそうと声をかけてから、
前方で全員が出てくのを見守っておいでの先生へ、

 「先生、草野さんが貧血を起こしましたっ。」
 「まあ、大変っ。」

私が保健室までお連れしても良いのですが、
この背丈の差ではいかんともしがたくと、
そういう要領も実はちゃんと心得がありながら、
何よりここまでは担いで来ておきながら、
そんな白々しいことを言い、

 「三木さんには私が“出ておいで”と言って来ますから、
  先生は草野さんをっ。」

暗に“急いで”という気持ちを込めて切迫気味に告げたは、
例の大暴れのあとの白々しい演技の蓄積か。
まだうら若きほうな先生には十分に効果もあったようで、
すぐさま判りましたと頷いて、
保健委員を呼ぶと、二人で肩を担ぎ合い、
1階にある保健室まで急いで下さったので。
そっちはそれでOKとし、

 「皆様も窓側へ寄っていてくださいませ。」

実は自分も此処までは恐れていない小虫だけに、
余裕の統率力を発揮して、残りの皆様を教室から引きはがし、

 「あのあの、紅ばら様は?」
 「三木様は出て来られないようですが。」

そのようなお声が掛かったものの、

 「案じる必要はありません。
  三木さんには、幼稚舎時代に培った“G祓い”の秘技があるそうです。」

本人が聞いたら“何じゃそりゃ”と、
怪訝そうに眉を寄せそうな言いようだったが、

 「あっ。」
 「私 覚えております、それ。」

幸いなるかな、
さすがは そのくらいの年代からの
持ち上がり組が半分以上を占める女学園。

 まだ年少さんという お小さい頃だったのに、
 それは勇ましくもあれをやっつけてしまわれて。
 まあそれは凄いじゃないですか。
 ああ、お教室から何か倒れる音がしますけれど。
 駆け回っておいでですのね。
 ああ、どれほどの勇姿でおいでなことか。
 是非とも観たいですけど、
 ダメですわよね、窓から敵が飛び出しますものね…と。

勝手に盛り上がってくださるのへ、ほうと息をついた平八で。

 “う〜ん。今季は恐らくこれで終わりかと思うけれど。”

来年、暖かくなったらば、
紅ばらさんのあの得物へ、
蠅たたきの先も飛び出すように改造してやろうかと、
苦笑交じりに企むひなげしさんだったようで。

  …………お。

  どがちゃん、がたごと、
  ずだんばしん、どすどすどす・ごんごがん。

そろそろ終盤なようです、皆様、お疲れさまでしたvv





     〜Fine〜  13.10.28.


  *今年は熱くて雨が少なかった夏だったので、
   スズメバチが殊の外増え、
   新しい巣を作るべく飛び交う集団も例年よりも多いのだとか。
   Gッキーの方はどうだったんでしょね。
   ネタにするのも久々なほどに、
   私は幸いにも今年はあんまり見てない気がしますが、
   多かったのか少なかったのか…。
   どうでもいいですね、はい。

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